開善寺の早梅の精12
文次が目をさますと、梅香も、お
いしい酒も、料理も消えていました。
文次は、一人ぽつんと、梅の木の
下に立っていました。
梅の花が、月あかりに照らされ、
美しくみえます。
何事もなかったかのように、梅の
花の香りが、あたり一面にただよ
っていました。
東の空が、だんだんに明るくなり
ました。
「ちゅん、ちゅん、ちゅん」
すずめの鳴き声も聞こえます。
「わしは、夢をみていたのだろうか。
美しい上品な女の人、舌がとけてし
まいそうなうまい酒、おいしい料理。
つづく
昨日の分は、こちら。