開善寺の早梅の精13
あれは、夢だったのだろうか。
いや、夢ではない。わしは、梅香
となのる女の人と、たくさんの歌
をよんだ。
ほんとに楽しいひとときだった」
文次は、小声でつぶやきました。
すると・・・。
風もないのに、梅の花びらが、ひ
らひらと文次の上に舞いおりてき
ました。
そして、梅の花の香りが、いちだ
んと強くなりました。
「文次さん。昨夜は、ほんとうに
楽しかったわ。
ありがとうございました。
来年、梅が咲くころ、またここで
会いましょうね。きっとよ」
どこからか、やさしい声が聞こえ
てきました。
「あの美しい女の人は、早梅の精
だったのかもしれない」
文次は、そう思いました。
つづく
昨日の分は、こちら。
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20090920#p1
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