火とぼし山14
「私、手で温めながら、歩いてき
たの」
二人は、ならんでむすびを食べま
した。
「次郎さん。今、どんな仕事をし
ているの」
「田んぼの草取りや、野菜の収穫
をしている。蚕も飼っているよ」
「蚕を?」
「おらが働いている家では、蚕を
たくさん飼っている。
桑の葉をつむのは、おらの仕事な
んだ。
きよちゃん。諏訪地方の養蚕は、
誰が始めたか知っている?」
「諏訪の神様と奥さまが、始めた
んでしょ。
二人は、寒さに強い桑の木をとり
よせ、伊勢から技術者をよんで、こ
の地方に養蚕を広めたんですってね」
「きよちゃん。よく知っているね」
つづく
昨日の分は、こちら。
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100321#p1
初めて読んでくださったかたへ
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1
信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。