火とぼし山33
数日後。
明神さまは、湖のほとりで、また
娘をみかけました。
娘は、西山にむかって、なにかしゃ
べっています。
「次郎さん。元気? 今、何をして
いるの。
一カ月も、次郎さんに会えないなんて、
私さみしい。一日も早く、次郎さんに
会いたい。
白鷺のように羽があれば、毎日でも次
郎さんの所へ飛んでいけるのにね」と。
「大好きな二人が、一カ月も会えない
なんて、つらいだろうな。
なんで会えないのじゃろ。
娘が青年に会いたいと思うのも、無
理はないのぅ」
娘の後姿をみながら、明神さまは小
声でつぶやきました。
つづく
昨日の分は、こちら。
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100411#p1
初めて読んでくださったかたへ
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1
信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。