火とぼし山


    火とぼし山38


「実は、十日ほど前、主人から姪
と会ってほしいといわれた」
「見合いをするということ」
「そうらしい。でも、おらは、そ
の場でことわった」



「次郎さん。ことわったなら、そ
んな話しなくてもいいのに」
きよは、次郎の気持がわかりませ
んでした。
「ことわったけれど、どうしても
姪と会ってほしいというんだ」



「次郎さんは、その人と会うつも
りなの」
「いや、会うつもりはない。
おらには、きよちゃんという大事
な人がいる。だから、会うつもり
はない」
次郎は、きっぱりいいました。



きよは次郎の気持を聞き、安心し
ました。
でも、次郎さんは、はっきりいや
といえない人だから、ことわりき
れずにその人と見合いをするのだ
ろうなと、きよは思いました。


           つづく



    昨日の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100416#p1



    初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。