竜の姿をみた少女


   竜の姿をみた少女2


「とうちゃん。今、なにか声が聞こえ
なかった?」
「いやー、なにも。なにか聞こえたかい」
「おっかあ、おっかあーという声が、聞
こえたの」 



「そうか。とうちゃんも、しらかば湖で
つりをしていた時、『おっかあ、おっか
あー。どこにいるー』という声を聞いた
ことがある」
「だれの声なの」
「妻をさがして歩く三郎の声だといわれ
ている」



「三郎って、だれ?」
「大昔、たてしな山のふもとに住んでい
たという三郎だよ。三郎はね、なぜか竜
になってしまったのだよ」
「竜に? とうちゃん。しらかば湖に、
竜がいるって、ほんとう?」



「さあなぁ。村には、竜がいるというい
いつたえがあるが、竜の姿をみた人はだ
れもいないからね。でも、しらかば湖に
は、竜がいるかもしれないよ」
おとうさんは、夢みるようにいいました。


             つづく





童話「竜の姿をみた少女」は、
みほようこの五冊目の童話集
「竜の姿をみた少女」に、収録
されています。
2009年12月、「鳥影社」
から、発行されました。



童話集「竜の姿をみた少女」は、
「しらかば湖」と「白駒池」を
訪ねた時に、信州諏訪の「風の
神様」から聞いた話。
風の神様からのおくりものシリ
ーズ5。





   収録されている童話

  ・ 竜の姿をみた少女

  ・ 女神さまとの約束



       裏表紙