竜の姿をみた少女


   竜の姿をみた少女6


「となりのかなちゃんは、しらかば湖
に竜がいると信じているようだわ」
「この世に、竜なんているはずないの
にね。なにを馬鹿なことをいっている
のかしら」



「そういえば、かなちゃんのおとうさ
んも、湖に竜がいると信じているみたい」
「ほんとうにおかしな親子だねぇ」
村の人たちは、どの人も「竜なんてい
ない」と思っていました。 



山深い村にも、ようやくあたたかな春
がやってきました。
湖のほとりでは、空色のいぬのふぐり
の花が、咲きはじめました。



かなは、いぬのふぐりの花が大好き。
「かな、この空色の花はね、いぬのふ
ぐりという花だよ。かわいい花だね。
空のお星さんが、草むらでかくれんぼ
しているみたいだね。この花は、きび
しい寒さの中で、春一番に咲くんだよ」
なくなったおかあさんが、教えてくれ
た花でした。


              つづく



   前回の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20110803#p2






童話「竜の姿をみた少女」は、
みほようこの五冊目の童話集
「竜の姿をみた少女」に、収録
されています。
2009年12月、「鳥影社」
から、発行されました。



童話集「竜の姿をみた少女」は、
「しらかば湖」と「白駒池」を
訪ねた時に、信州諏訪の「風の
神様」から聞いた話。
風の神様からのおくりものシリ
ーズ5。





   収録されている童話

  ・ 竜の姿をみた少女

  ・ 女神さまとの約束



       裏表紙