火とぼし山

[童話]火とぼし山


火とぼし山 90


第七章 新しい出発 20


「やはり、きよは何もおぼえていないのですね。
自分の名前も、大好きだった次郎のことも、み
んな忘れてしまったなんて。かわいそうに」
手長は、きよの気持を思うとやりきれません。


「手長、足長。そういうわけなので、きよが眠
っている間に、静岡までつれていってほしい」
「はい、わかりました」
手長と足長は、ぐっすり眠っているきよを、静
岡までつれていきました。


         つづく

火とぼし山

[童話]火とぼし山


火とぼし山 89


第七章 新しい出発 19


「夜遅くにもうしわけない。これから、きよを
静岡の知り合いまでつれていってほしい」
「えっ、きよを、静岡へつれていくのですか」
手長が驚いて聞きました。


「そうじゃ。きよは、自分の名前も、大好きだ
った次郎のことも、何もおぼえていない。記憶
がなくなってしまったきよを、ここへおいてお
くわけにもいくまい。きよが生きていることを
知ったら、次郎が何をするかわからないしな」
明神さまがいいました。


        つづく