赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花


赤い夕顔の花 37


お万たちは、近道を歩いて行きました。
すると、向こうから、下条の兵士が二人歩いてきま
した。
「おい。今、すれちがった百姓の一家、奥がたと若
君ではないか」
「まさか。奥がたが、あんなうす汚い野良着をきて
いるはずがない」


「いや、わからんぞ。変装して、城をぬけだしたの
かもしれん」
すれちがった兵士たちの声が聞こえました。
「みつかってしまったかしら」
お万が、心配していいました。


         つづく

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花


赤い夕顔の花 36


楽しかったこと、苦しかったこと、辛かったことな
どが、次々に思い出されました。
「盛永さまや家臣たちが、無事でありますように。
もう一度、この城に戻ってくることができますように」
お万は、心の中で祈りました。


「奥がたさま。背中の荷物を少し持ちましょうか」
「だいじょうぶです。あなたこそ、重い荷物を持
っていただきすみません。道中、どうかよろしく
お願いします」
「奥がたさま。無事に浪合の実家へ着けるとい
いですね。では、先を急ぎましょう。下条の兵士
たちにみつからないように、こちらの近道を行き
ましょう」


         つづく