2020-01-09 赤い夕顔の花 童話 [童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 35 一方、奥がたのお万は、幼い長五郎を胸にだき、 家臣とともに城を出ました。 そして、浪合の実家へ向かいました。 お万たちは、下条の兵士たちにみつからないよ うに、着古した野良着をきて、城を出ました。 誰がみても、奥がたのお万だとは思いません。 「再び、この城に戻ってくることができるだろうか」 城を出る時、お万は、心の中でそっとつぶやき ました。 お万は、夫の盛永や長五郎、犬坊と暮らした日 々を、なつかしく思い出しました。 つづく
2020-01-08 赤い夕顔の花 童話 [童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 34 しかし、犬坊は、その声を無視しました。 「盛永さまは、私ひとりのものだ」 そうさけぶと、犬坊は、盛永の心臓をめがけてさし ました。 「うーっ」 盛永が、うめき声をあげました。 胸から、血がふきだしました。 「犬坊・・・何をするのじゃ。わしは、誰よりもおまえ が好きだった」 そういうと、盛永は息をひきとりました。 あっけない最後でした。 「私は、この世で一番好きだった人を、やりでさし 殺してしまった」 犬坊は、大声でさけびました。 そして、わぁーと泣きながら、山の奥へ走って行き ました。 つづく