赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花


赤い夕顔の花 35


一方、奥がたのお万は、幼い長五郎を胸にだき、
家臣とともに城を出ました。
そして、浪合の実家へ向かいました。
お万たちは、下条の兵士たちにみつからないよ
うに、着古した野良着をきて、城を出ました。
誰がみても、奥がたのお万だとは思いません。


「再び、この城に戻ってくることができるだろうか」
城を出る時、お万は、心の中でそっとつぶやき
ました。
お万は、夫の盛永や長五郎、犬坊と暮らした日
々を、なつかしく思い出しました。


          つづく

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花


赤い夕顔の花 34


しかし、犬坊は、その声を無視しました。
「盛永さまは、私ひとりのものだ」
そうさけぶと、犬坊は、盛永の心臓をめがけてさし
ました。
「うーっ」
盛永が、うめき声をあげました。
胸から、血がふきだしました。
「犬坊・・・何をするのじゃ。わしは、誰よりもおまえ
が好きだった」
そういうと、盛永は息をひきとりました。


あっけない最後でした。
「私は、この世で一番好きだった人を、やりでさし
殺してしまった」
犬坊は、大声でさけびました。
そして、わぁーと泣きながら、山の奥へ走って行き
ました。
 
 
        つづく