朝顔のエスカレーター


父がなくなったのは、昭和53年9月5日。
私が35才の時だった。
弟はその頃海外勤務で、一家で南米のチリへ。
すぐ下の妹は、初めてのこどもを出産して、入
院していた。 




そんな中での、父の突然の死。
病名は心筋梗塞。 
私が知らせを聞いてかけつけた時は、すでに父
はなくなっていた。  
父の葬儀は、チリにいる弟が帰国してからとい
うことになった。 




父がなくなった夜。
その夜は、月がとてもきれいだった。
こんな美しい月があるのか・・・と思った位。





母は隣の部屋で休んでいた。
私だけが、父のそばにつきそっていた。
暗闇の中で、突然ろうそくの火が大きくゆれた。




すると・・・。
掛け時計の上に、黄金色の美しい鳥がとまった。
暗闇の中で、その鳥はきらきらと輝いていた。
幻の鳥・鳳凰のような鳥だった。
なんて美しい鳥だろう!!
その時、父が微笑んだような気がした。




私は夢をみているのではないだろうか?
私は腕を力いっぱいつまんだ。
「痛い!!」
だから、夢ではない。
そう、思った。




「おかあちゃ!!」
となりに寝ている母を呼ぼうとしたが、声がでない。
黄金色の鳥は、あっという間にどこかへとびさって
いった。 
あっという間のできごとだった。
「黄金色の鳥は、父を迎えにきたのだな」
私はそう思った。




「人はなくなっても、その人の魂は永遠に生き続け
るのだよ」ということを、神様は私にそっと教えて
くれたのかもしれません。 
そして、その時、「この不思議な体験を伝えなさい」
・・・といわれたような気がした。




次の朝、庭にでると、父が育てた朝顔が、二階の
窓まで届くようにたくさんの花をつけていた。
紫・白・ピンク・青・・・、色とりどりの花が咲い
ていた。 美しかった。 こんな美しい朝顔をみた
のは、初めてだった。 大きな竜が、空にかけのぼ
っていくような、そんな感じだった。




童話「朝顔エスカレーター」は、父がなくなった
時の、私の不思議な体験から生まれた。 
この春・・・といっても、まだ挿絵ができないので
いつになるかわからないが、鳥影社から「ふしぎな
鈴」という童話が発行される。
その「ふしぎな鈴」のなかに、「朝顔エスカレータ
ー」の一部が収録される予定である。  



ホームページにも「朝顔エスカレーター」の童話
をのせてあるので、読んでいただきたい。



http://www.geocities.jp/dowakan/douwa.html