昭和50年代の歌6

賽銭を少しはづみて娘夫婦と
     深閑とせし社に初詣する 




住所氏名血液型も書きそえて
     防災頭巾今宵仕上げぬ




東海地震に備え吾が駐車場に
     自主防災集合地の立て札たちぬ




心通ふ友等を招きて食事せむと
     一時間早く床を離れぬ




冬のまに五加の棘をとることを
     友の歌にて初めて知りたり




埃立つまでに乾きし門先に
     まばらに散れる松葉掃きよす




自信なき旧仮名づかひに心配り
     新入会の歌稿書きおり




陽炎の残るるを見つつ想ひおり
     友と文永寺巡り来りて




遠く来て宿りし大島の民宿に
     潮騒の音沁みて聞きをり




霧深く登頂あきらめし三原山
     黒き溶岩二つ拾ひぬ




被害者意識強き人と話しいて
     吾が心迄暗くなりたり




早春の陽射しやはらぐ丘畑に
     夕おそく迄人動く見ゆ