昭和50年代の歌10


来年は帰国できると汝一家の
    クリスマスカード今宵届きぬ




雪降れば雪にまつはる思ひ出あり
    今日はしきりに亡き夫思はる




誕生日忘れずにいて
    健康気遣ひくるる娘の電話あり




三日前テレビに見し高野山
    今日登り来ぬ願ひかなひて




枯芝をしのぎて赤く萌えいでし
    スカンポに今日も雨ふりしきる




亡き夫と移り住みたる頃を思ひ
    傷つきし箪笥を丹念に磨く




過ぎしのみ言ふは老いたるあかしなりと
    自ら言ひて友は笑ひぬ




水張りし田の面に映る三日月を
    会合に急ぐ足止めて見る




脱サラをして君が拓きし羊牧場
    ひろびろとして若葉明るき




春日光あはあはと射すわさび畑
    畝間の水の澄みて流るる




すこやかに生きむと願ふ朝あさに
    梅干にて茶を飲むも楽しき