昭和50年代の歌9


植え替へを怠りて来し夏水仙
    葉のみ繁りて一つだに咲かず




こほろぎ一つ歩む厨に紫蘇の実を
    冷凍にせむと青く茹であぐ




友を送り立つ門先にしゅうかいどう
    夕日に赤く茎透けて見ゆ




ぼけの実の黄に熟れ匂ふ裏庭に
    散り尽したる柿の葉を掃く




小春日の穏やかな日ざし心地よく
    太りて伸びし野沢菜を洗ふ




一つことにこだはりをりし幾日か
    今朝穏やかにもの編み始む




師走の庭に裸電球ともし刈る
    庭師の鋏の音隣屋よりきこゆ




新たなる希望湧きくる今日にして
    ポインセチヤの一鉢買ひ来ぬ




籔こうじのつぶら実赤し冴ゆる庭に
    今年終りの草むしりいる




米花の返り咲く庭に水仙
    萌えし緑に土軽く盛る




我が撞きし鐘の余韻に心澄み
    厄除に来し寺を去り行く




八日の日をヒムロ歌稿の提出日と
    決めて励み来し二年