植え替へを怠りて来し夏水仙
葉のみ繁りて一つだに咲かず
こほろぎ一つ歩む厨に紫蘇の実を
冷凍にせむと青く茹であぐ
友を送り立つ門先にしゅうかいどう
夕日に赤く茎透けて見ゆ
ぼけの実の黄に熟れ匂ふ裏庭に
散り尽したる柿の葉を掃く
小春日の穏やかな日ざし心地よく
太りて伸びし野沢菜を洗ふ
一つことにこだはりをりし幾日か
今朝穏やかにもの編み始む
師走の庭に裸電球ともし刈る
庭師の鋏の音隣屋よりきこゆ
新たなる希望湧きくる今日にして
ポインセチヤの一鉢買ひ来ぬ
籔こうじのつぶら実赤し冴ゆる庭に
今年終りの草むしりいる
米花の返り咲く庭に水仙の
萌えし緑に土軽く盛る
我が撞きし鐘の余韻に心澄み
厄除に来し寺を去り行く
八日の日をヒムロ歌稿の提出日と
決めて励み来し二年