下絵なしで唐草模様をひたすらに彫る
沈金師の手元息つめて見る
霜枯れて桑の畑に電柱の
落とす影長く冬に入るなり
落ち柿のすゆる臭ひも親しみて
秋づく日射しにほうれん草を蒔く
大根の白く乾ける門先にて
乙女椿の返り花咲く
八つ手の花白く散りしく裏庭に
霜蕨の花茎立ちて来にけり
木の梢に残りてありし富有柿も
へたのみとなり小鳥来遊ぶ
カマキリの卵のつきしベペロシアの
鉢を夜ごとにとり入れて囲ふ
お日待ちの朝より炊きし一表の飯
千個のむすびに握り終へたり