竜の姿をみた少女

「竜の姿をみた少女」は、みほようこの二冊目の
童話集・「竜神になった三郎」の続編。


昨日にひきつづいて、「竜の姿をみた少女」を紹
介します。初めてのかたは、17日・18日の日
記を読んでくださいね。


   「竜の姿をみた少女3」


でも、かなは「もしかしたら、湖に竜が住んでいる
のではないかな」と思っていたのです。


山深い村にも、ようやくあたたかな春がやってきま
した。湖のほとりでは、空色のいぬのふぐりの花が
咲きはじめました。
かなは、いぬのふぐりの花が大好き。
「かな、この空色の花はね、いぬのふぐりという花
だよ。かわいい花だね。空のお星さんが、草むらで
かくれんぼしているような花だね。いぬのふぐりの
花は、きびしい寒さの中で、春一番に咲くのだよ」
そういって、おかあさんが教えてくれた花でした。



そんな春のある日。
かなは、一人で湖へ行きました。
そして、しらかばの木の下で、ぼんやり湖をながめ
ていました。
すると・・・。
どこからか、ひそひそと小さな声が聞こえてきました。
「誰かしら?」
 あたりをみまわしましたが、誰もいません。
耳をすませて聞いていると、どこからかこんな話し声
が聞こえてきました。



「しらかばさん。・・・三郎さまは・・・今年も・・
この湖へ・・・みえるかしら」
「ああ、みえるとも。・・・三郎さまは・・・この村
が・・・大好きだからね」
「三郎さまは、いつ・・・この湖へ・・・みえるのか
しら」
「湖の氷も・・・とけ始めたし、ぼつぼつ・・・みえ
るのではないかな」
とぎれとぎれでしたが、こんな声がどこからか聞こえ
てきました。
しらかばといぬのふぐりの花が、話をしていたのでし
ょうか。
「三郎さまって、誰のことかしら。竜になった三郎の
ことかしら」
かなは、そう思いました。

それから一週間がすぎました。
 

        つづく



    「竜神になった三郎」が収録されている本



竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)

竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)