竜神になった三郎


     竜神になった三郎4


その日、三郎は、軽い足取りで家に帰りま
した。
何時間もかかる長いみちのりも、急な坂も、
今日はへっちゃらでした。
「三郎、今日はうれしそうな顔をしているが、
町で何か良いことがあったかや」
太郎が聞きました。



「いや、べつに」
三郎は、ぶっきらぼうに答えました。
三郎の心の中は、諏訪湖のほとりで会った美
しい娘のことで、いっぱいだったのです。
その夜、三郎はなかなかねつくことができま
せんでした。



その後、二人は、諏訪湖のほとりで何度か会
いました。
そして、会うたびに「一緒にくらしたい」と
思うようになりました。



一年が過ぎました。
山の木々が、赤や黄色に紅葉し始めた頃、三郎
と娘は、夫婦になりました。
夫婦になった二人は、仲むつまじく暮らしました。
「三郎さん、ご苦労さま。疲れたでしょ」
仕事から帰ると、妻はやさしく三郎を迎えてくれ
ます。
三郎は妻の笑顔をみると、一日の疲れがふきとぶ
ような気がしました。



三郎の妻は、姿が美しいだけでなく、心の優しい
人でした。
その上、働き者だったのです。
掃除も洗濯も、料理もはたおりも、とても上手で
した。
「すこしゆっくり休んだらどうだい」
三郎が心配するほど、妻はよく働きました。


               つづく




竜神になった三郎」は、みほようこの二冊目の
童話集・「竜神になった三郎」に収録されていま
す。



竜神になった三郎」は、2004年4月、七年に
一度おこなわれる諏訪大社御柱祭にあわせて
http://www.choeisha.com/
から、発行されました。







   あなたは、信じていた人にうらぎられた時、
   どうしますか?




わが家のBlogPet「ryuu」の句



竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)

竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)