福寿草になった少女


    福寿草になった少女4


女の子は長者の顔をみて、にっこりほほえみ
ました。
「おう、おう。よい子じゃのぅ」
長者は目を細め、女の子をあやします。
「ねぇ、私にもだかせて」
奥さんは女の子を受けとると、やさしくほおず
りしました。
すると、お乳の甘いかおりが、ぷーんとしました。
女の子はつぶらなひとみで、じっと奥さんの顔を
みています。



そして、時々にこっとほほえみます。
「なんて清らかな目をしているのでしょう。
だんなさま、この子を我が家で育ててあげましょ
うよ」
「そうだのぅ。明神さまがわしらにこの子を授け
てくれたのかもしれんのぅ」
二人は、女の子をわが子として育てようと決めま
した。



そして、神棚の前へ、女の子をつれて行きました。
「明神さま、わしらにこんな可愛いこどもを授け
ていただき、本当にありがとうございました。
この子を大切に育てます。」
二人は、明神さまに何度もお礼をいいました。
「この子にたくさんの福が授かりますように」
長者は、女の子に「福」となづけました。



「長者さまにかわいい女の子が授かったそうだよ」
「長者さまも奥様も、どんなにうれしいことか。本
当によかったのぅ」
「おやしきもこれからにぎやかになるねぇ」
うわさを聞いた村の人々も、大喜びでした。
「福ちゃんにお乳を・・・・・・」
男の子を生んだばかりの人が、福に乳をのませてく
れました。

         つづく  




童話「福寿草になった少女」は、みほようこの二
冊目の童話集・「竜神になった三郎」に収録され
ています。



竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)

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