明神さまの姿をみた少女


明神さまの姿をみた少女2


その後、少女はいろいろな所で、おおぜいの少年
に出会いました。しかし、少女は、神様の化身の
ような、心のやさしい少年には、会うことができ
ませんでした。



少女は、その後もずっと明神さまにお参りして、
兄のことをお願いしていました。
しかし、なぜか、兄は少しもよくなりませんでし
た。



少女が明神さまの声を聞いてから、三年の月日が
たちました。
からりと晴れた秋のある日。
少女は、遠くの高原へ、松虫草の花をとりにでか
けました。
兄は、うす紫色の松虫草が大好きでした。
少女は、なんとかして兄のよろこぶ顔がみたかっ
たのです。
少女は、細い急な道を、高原めざして登っていき
ました。まわりの山々は、赤や黄色に紅葉しはじ
めていました。



三時間くらい歩いたでしょうか。
少女は、ようやく高原のふもとにつきました。
夏の間美しく咲いていた高原の花々は、すっかり
かれていました。
そして、広い高原は、すすきでおおわれていまし
た。少女が高原の頂上めざして登っていくと、枯
草の中に、二十本くらい松虫草の花がさいていま
した。



松虫草の花は、秋の日をあび、きらきらとかがや
いています。
「なんてきれいな花だろう。兄ちゃんは松虫草
花をみて、どんな顔をするだろうか」
少女は、松虫草の花をじっとみていました。


                 つづく



童話「明神さまの姿をみた少女」は、みほようこ
の初めての童話集・「風の神様からのおくりもの」
に収録されています。



風の神様からのおくりもの―諏訪の童話

風の神様からのおくりもの―諏訪の童話