童話「守屋山に黄金色の花が咲いた」


童話「守屋山に黄金色の花が咲いた」1


明神さまが住んでおられる守屋山には、雪がとける
ころ、黄金色の花が咲くといういいつたえがありま
した。
黄金色の花をみた人は、一生幸せに暮らせるそうです。
春になると、おおぜいの人が守屋山に入り、黄金色の
花を探しました。
でもなぜか黄金色の花はみつかりません。
守屋山のふもとの村に住む人にとって、黄金色の花は
幻の花だったのです。



明神さまへ、雨の日も風の日も、一日も休まずおまい
りにくる一人の少女がいました。
「兄ちゃんが一日も早くよくなりますように。
昔のやさしい兄ちゃんになれますように・・・。
少女は明神さまに、毎日兄のことをお願いしていたの
です。しかし、兄は少しもよくなりませんでした。



少女が明神さまへ千回目のお願いに行った日。
境内の中は、昨夜から降った雪で真っ白でした。
少女は真っ白な雪の上を、神殿にむかって歩いていき
ました。
すると、神殿の方からおごそかな声が聞こえてきまし
た。
「わしは守屋山に住んでいる明神じゃ。
おまえはなんて心のやさしい少女なのじゃ。
おまえが毎日ここへお参りにきていることは、よーく
知っているぞ。


                   つづく


童話「守屋山に黄金色の花が咲いた」は、みほようこ
の初めての童話集「風の神様からのおくりもの」に収
録されています。



風の神様からのおくりもの―諏訪の童話

風の神様からのおくりもの―諏訪の童話