童話「ライオンめざめる」


    童話「ライオンめざめる」7


りゅうはわんわんなきながら、ライオンのまわりを
走りまわっています。
しばらくすると、ライオンはふつうの大きさになり
ました。
「うおー」
ライオンが、うれしそうな声をあげました。
「かなさん、ありがとう。やさしいかなさんのおか
げで、私は長いねむりからさめることができました」
ライオンは、うれしそうにいいました。
かなはびっくりして、大きくなったライオンをみて
います。



「少女よ、わしは諏訪の神・明神じゃ。おまえは本当
に心の優しい少女じゃのぅ。わしは諏訪の地をあちこ
ちみて歩いているので、おまえのことも、りゅうのこ
とも、よーく知っているぞ。おまえは何千年もの間誰
も聞くことができなかったライオンの声を、よく聞く
ことができたねぇ」
神さまは、感心したようにいいました。



「かな、さっき松虫草のまわりを舞っていたちょうは、
何というちょうか知っているか」
「知りません。神さま、何というちょうですか?」
「くじゃくちょうというのじゃ。この高原にきても、
めったにくじゃくちょうには会えんぞ。心のやさしい
少女がこの高原にくると、くじゃくちょうはどこから
かでてくるのじゃ。でも、本当にやさしい人しか、く
じゃくちょうの姿はみえないのじゃ。わしもそこでく
じゃくちょうの舞をみていたが、美しい舞じゃったの
ぅ」
神さまは、くじゃくちょうのことを、いろいろ教えて
くれました。くじゃくちょうは、ちょうのままで、寒
い冬をこすのだそうです。


        つづく



童話「ライオンめざめる」は、みほようこの四冊目
の童話集・「ライオンめざめる」に収録されます。
「ライオンめざめる」は、「風の神様からのおくり
ものシリーズ」4。
今、本を製作中。



童話集「ライオンめざめる」は、今月末(九月末)に
http://www.choeisha.com/
から、発行される予定です。



     収録される童話


  ・ ライオンめざめる

  ・ 笛の音よ、永久にひびけ

  ・ かきつばたになった少女