愛犬りゅう「ばいばい、またね」


愛犬りゅう「ばいばい、またね」17


ぼくはボールが大好きだ。
好物の肉より好きだ。
一食ぐらいめしを食べなくたって、ボールで遊
んでいた方が良い。
それ位、ボールが大好きだ。



ある日、こうちゃんが学校から柔らかなボール
をもって帰ってきた。
体育の先生が、見本にもらったボールを「りゅ
うにあげて」とくれたらしい。
「りゅう、ボールだぞ」
そういって、こうちゃんは柔らかなボールをぼ
くにくれた。



そのボールをみた時、ぼくは生まれる前のこと
を思い出した。
なぜ、そんなことを思い出したのか、ぼくにも
わからない。
広い草原で、一匹の犬がボールを拾っている。
草むらには、数えきれないほどのボールが落ち
ている。
そのボールを、一つ・二つ・三つ・・・と拾って
いる。
「ぼくは前世でボール拾い犬だったのかな?」
「きっと、そうだったにちがいない」
なぜなら、ぼくは死ぬまでに百個、いやもっと
たくさん、二百個近いボールを拾ったのだから。



おっと、そんな話はどうでも良い。
かんじんな話を続けよう。
ぼくはこうちゃんがくれたボールで遊んだ。
柔らかなボールだったので、何度かボールにか
みついたら、破れてしまった。
「こんな柔らかなボールでは駄目だ。そうだ、
良いものがある」
そういって、こうちゃんは二階からゴルフボー
ルを持ってきてくれた。
それは小さなボールで、歯がたたないほどかた
かった。
ぼくはうれしくなって、そのボールできゃあき
ゃあいって遊んだ。



その様子をみていたあーちゃんが、あわてて外へ
とびだしてきた。
「あーちゃんは何をしにきたのだろうか?」
「ちょっと待って!!りゅうにそんなボールをあ
げないで」
「なぜ?」
「なぜって、考えりゃわかるら。この犬、何でも
のみこんじゃうの」
あーちゃんが「この犬」といっている。


        つづく