愛犬りゅう「ばいばい、またね」


   愛犬りゅう「ばいばい、またね」24


その夜。
「おい、指をどうしたんだ?」
「昼間、りゅうと遊んでいたら、りゅうにかみつ
かれたの」
「かみつかれた?」
「そう、りゅうがいきなりがぶりと指にかみつい
たの」
「いきなりって・・・、りゅうがいきなりかみつ
くはずはない」



「何いっているの。みてもいないくせに・・・。
いきなり指にかみついたのよ」
あーちゃんはまだ指が痛いらしく、きげんが悪い。
「またりゅうのボールでもとりあげたのだろ?」
「とりあげたりしないわ。ただボールをもちあげ
たの」
「それじゃあ、とりあげたのと同じじゃないか。
だから、りゅうはまたボールをとりあげられると
思ったのだよ。きっと・・・」
「・・・・・・」



いろいろいってもしかたがないと思ったのか、あ
ーちゃんはだまってしまった。
こうちゃんが何かぼそぼそといった。


すると・・・。
また、あーちゃんが話を始めた。
「りゅうって、本当にしつこい犬ね。りゅうがあ
んなにしつこい犬だとは思わなかった・・・。
耳をひっぱっても、しっぽをひっぱっても、かん
でる指をはなしてくれないのよ」



「りゅうだって、血をみてびっくりしたのだろう。
ハプニングだとはいえ、一番かわいがってくれる人
の指をかんじゃったのだから。りゅうはどうしてい
る?」
「小屋に入ったまま、御飯だよといっても、でてこ
ないわ」
「反省しているのだよ。きっと・・・」
「そうね。りゅうだって、かみつく気でかみついた
わけではないだろうし・・・」



こうちゃんに話を聞いてもらい、あーちゃんのいか
りもだいぶおさまってきたようだ。
「これからは、りゅうの前で物をとる時、気をつけ
ろよ。またやられるぞ」
「そうね。これからは気をつけるわ」
あーちゃんとこうちゃんの会話が、台所から聞こえ
てきた。
「もう二度とあーちゃんの手にかみつかないぞ」
ぼくは心に強くちかった。


ところが・・・。
それから十年後、また同じような事件がおきてしま
った。


つづく