白駒の池


     白駒の池12


「その湖のほとりを歩いていたら、生まれたばか
りの白い馬が、足にけがをしてたおれていたんだ
って。湖の近くには家が一軒もなかったので、と
うちゃんはその馬を家へつれてきたの。生まれた
ばかりのそれはかわいい馬だったわ。その後、と
うちゃんは、道に迷ったあたりを何度もさがした
けれど、その湖をみつけることができなかったと
いっていたわ」



「それで、長者は、森の中でひとりごとをいって
いたのだね」
「そんなわけで、どこの馬だかわからないけれど、
白駒はわが家にいるの。ねえ、白駒。そうよね?」
「そうだったのか」
「清太さん。そうだったのかって、どういう意味?」
「いやー、こんなことを、きよちゃんに話していい
のかな」
清太は、なぜか話すのをためらっています。



「清太さん。なんでも話して。かくしごとはいやよ」
「白駒。きよちゃんに話をしてもいいかな?」
「話してもいいよ」というように、白駒は「ひひー
ん」と鳴きました。
「実はね・・・長者の家へきて、十日くらいたった
ころかな。夜、馬小屋をのぞいたら、白駒がいなか
ったんだ。おらはびっくりして、ひっしで白駒をさ
がして歩いた。そうしたら、一時間後、白駒はなに
くわぬ顔でもどってきた。長者のじまんの馬が、こ
のまま帰ってこなかったらどうしようと、おらは心
配でたまらなかった」
清太は、ぽつりぽつりと話してくれました。


                       つづく