女神さまとの約束


      女神さまとの約束22


「さあ、ふく。元気になったから、家へ帰ろう」
「とうちゃん。私は、この岩場にとどまるわ」
「なぜだい?」
「私、八ヶ岳の女神さまと約束したの」
「どんな約束をしたんだい」



「とうちゃんの病気をなおしてもらうかわりに、
この岩場にとどまって、病気で苦しんでいる人を
助けると、女神さまと約束したの」


「そうか。ふくは、わしのために、女神さまとそ
んな約束をしたのか。わしは、何も知らなかった」
「私、一日も早く、とうちゃんに元気になってほ
しかったの。女神さまと約束した時は、とうちゃん
のことしか考えていなかった。だから、この岩場に
残るということがどういうことか、その時は何も考
えていなかったの。冷静になってよく考えてみると、
ここへ残るということは、とうちゃんとはなればな
れにくらすということなのよね」
ふくは、さみしそうにいいました。


   つづく