きよと清太と、そして白駒


 きよと清太と、そして白駒32


続いて、二枚目・三枚目・・・と、花びら
が開いていきます。
そして、最後の六枚目の花びらが、今開こ
うとしていました。
「清太さん。最後の花びらが開くわ」
きよが、うれしそうにいいました。



夕やみの中で、レモン色の花だけがくっき
りうかびあがってみえます。
「ゆうすげの花って、ほんとにきれいな花ね」
きよは、うっとりしながらゆうすげの花を
みています。
清太には、きよがゆうすげの精のように見
えました。



「おらは、きよちゃんが大好きだ。でも・・・
きよちゃんは、長者のおじょうさま。おら
は、長者の使用人。どんなにきよちゃんが
好きでも、きよちゃんと結婚することはで
きない」
清太は、自分の心にいいきかせました。
二人は、時のたつのも忘れ、ゆうすげの花
をみていました。



「きよちゃん。ぼつぼつ、家に帰ろう。長
者が心配しているよ」
「今夜は、ゆうすげの花をみることができ
て、うれしかったわ。清太さん、ありがとう」
「おらこそ、ありがとう。きよちゃん」
清太は、笑顔でいいました。


     つづく


「きよと清太と、そして白駒」は、信州の
佐久地方に伝わっている「白駒の池」の伝
説をヒントにして書いた物語です。