黄金色のまゆ玉6
そんなある日。
「明神さま。このごろ、奥さんの顔をみか
けないけれど、奥さんは元気かのぅ」
「ああ。元気じゃよ。妻は用事があって、
里へ帰ったのじゃ」
「それにしても、長いのぅ。奥さん、どう
かしたのかね」
「どうもしないよ。今に帰ってくるじゃろ」
奥さんのことをたずねると、明神さまはな
ぜか困った顔をしました。
「明神さまと奥さま、けんかしたのではない
かしら。そして、奥さまが家をでていってし
まったのかもしれないよ」
「まさか・・・」
「あんなに仲のいい夫婦ですもの、けんかな
んかしないでしょ」
「夫婦ですもの、けんかくらいするわよ。
だから、明神さまは奥さんのことが心配で、
真夜中にそっと様子をみにいくのではないか
しら」
「そうかもしれないね」
村の人たちは、そういって奥さんのことを心
配しました。
つづく
信州の諏訪地方には、「おみわたり」とい
う伝説があります。
「黄金色のまゆ玉」は、「おみわたり」の
伝説をヒントにして、みほようこが書いた
物語。