女神さまとの約束


   女神さまとの約束38


秋になり、硫黄岳の木々も、赤や黄色
に紅葉しはじめました。
そんなある日。
「白駒、おねがい。私を家につれていっ
て」
「ふくさん、女神さまとの約束を忘れ
たのですか。約束をやぶると、大変な
ことになりますよ」



「大変なことって?」
「女神さまとの約束をやぶると、ふく
さんの命はありません。
私は、女神さまとの約束をやぶった何
人もの人を知っています。
だから、ふくさんには、女神さまとの
約束を、ちゃんと守ってほしいのです」



「私は、女神さまとの約束を守り、け
わしい岩場に残り、何百人もの人をす
くいました。
とうちゃんに会いたくても、私はじっ
とがまんしました。



ねぇ、白駒。三日くらい家に帰っても
だいじょうぶでしょ。すぐここへもど
るから。
白駒、おねがい。私を家につれていっ
て。どうしても、とうちゃんに会いた
いの」
ふくは、ひっしで白駒にお願いしました。
 


             つづく



信州の佐久地方には、「白駒の池」
という伝説があります。



「女神さまとの約束」は、「白駒
の池」の伝説をヒントにして、
みほようこが書いた物語。