火とぼし山 12
明神さまは、諏訪地方を守っている神
様。農耕の神様・狩猟の神様・風の神
様ともいわれています。
明神さまは、下諏訪に住んでいる奥さ
んの所へ行く途中でした。
「娘か・・・。こんな寒い夜、あの娘
はどこへ行くのだろう」
娘のことが気になった明神さまは、そ
っと後をつけました。
「みしっ」
「ばりっ」
娘が歩くたびに、氷の割れる音がします。
「あぶない!」
「そっちへいっては、だめ」
明神さまは、はらはらしながら、娘の
後をついていきました。
「娘よ、なぜ氷の上を歩くのじゃ。
湖の氷は、まだ薄い。湖に落ちれば、
死んでしまうぞ」
明神さんは、心の中で娘に話しかけまし
た。
無事に湖をわたりおえた娘は、山に向か
って歩き始めました。
つづく
信州の諏訪湖には、「火とぼし山」と
いう悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。