開善寺の早梅の精


   開善寺の早梅の精9


「文次さん。私の家へ寄っていきま
せんか」
「えっ?」
文次は、心をみすかされたような
気がし、どきどきしました。
「私、文次さんとゆっくりお話が
したいのです」



「梅香さん。ほんとにおじゃまし
ていいのかな」
文次が、聞きました。
「どうぞ、えんりょなく。おいし
いお酒をごちそうしますよ」
誘われるままに、文次は女の人の
後をついていきました。



文次は、りっぱな書院に案内され
ました。
床には、禅語の軸がかかっています。
唐胴の一輪ざしには、梅がさして
ありました。
部屋の中は、梅の花の香りでいっ
ぱいでした。


             つづく



信州の伊那谷に、「開善寺」という
寺があります。


「開善寺の早梅の精」は、開善寺に
伝わっている話をヒントにして、
みほようこが書いた物語。



   初めて読んでくれたかたへ


   開善寺の早梅の精1


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20080607#p1



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