古事記神話「古事記物語」


    豊玉比売 8


三年がすぎたある日。
山彦は、大きなため息をつきました。
「兄のつり針の件で、豊玉比売に相
談しようとここへ来たのに、そのこ
とをすっかり忘れてしまっていた」と。



山彦のため息を聞いた豊玉比売は、
どうしたのだろうと心配しました。
豊玉比売は、海の神に相談しました。



「父上。 山彦さまは、ここへきて
三年になりますが、ため息などつ
いたことは一度もありません。 そ
れなのに、昨晩は大きなため息を
ついていました。 なにか心配ごと
でもあるのでしょうか」


      つづく