竜の姿をみた少女11
「その人のことを、心から信じていれば、どんなに
ひどいことをされても、その人をうらんだり、にく
んだりできないものだということを、わしはその時
知ったのじゃ。その人のことを信じるということは、
いい所も悪い所も、すべて認めてあげるということ
なのだろうね」
おじいさんは、自分にいいきかせるようにいいました。
「それはそうと、かなは、今でもしらかば湖に竜が
いると信じているのかな」
「はい、信じています。私は、この湖に、竜がいる
のではないかなと思っています」
「なぜ、竜がいると思うの?」
「私、湖のほとりで、誰かが話しているのを聞いて
しまったの。もうすぐ三郎さまがしらかば湖にみえ
るよって、話していたわ。三郎さまって、竜になっ
た三郎のことではないかと思うの」
「かなは、いつその話を聞いたの?」
「いぬのふぐりの花が、咲き始めたころかな」
「そうか。しらかばたちが話しているのを、聞いて
しまったのか。わしも、しらかばたちとよく話をす
る。しらかばがね、この村には、湖が大好きな少女
がいると、おまえのことを話してくれたよ」
つづく
「竜の姿をみた少女」は、みほようこの二冊目の童話集・
「竜神になった三郎」の続編。
「竜神になった三郎」は、2004年4月、七年に一度
おこなわれる諏訪大社の「御柱祭」にあわせ、「鳥影社」
から発行されました。
- 作者: みほようこ,長野ひろかず
- 出版社/メーカー: 鳥影社
- 発売日: 2004/04
- メディア: 単行本
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