げら、桜が咲いたよ


  げら、桜が咲いたよ7


そうだ、ほかの鳥にも知らせてあ
げよう」
「そうね、みんなよろこぶわ」
おじいさんには、げらたちの鳴き
声が、こんなふうに聞こえました。



雪はまだちらちらと降り続いてい
ます。
おじいさんの家が、庭が、雪で真
っ白になりました。
桜の木も、花も真っ白です。



あたりがしーんと静かになりました。
部屋の時計の音だけが、チクタク、
チクタクと聞こえてきました。


             おわり

昭和60年代の歌17


梅雨の雨に幾日こもれる間に梔子の

   若葉食ひ荒す虫は太れり



在りし日に夫の植ゑし岩煙草

   蹲のかたへに花咲き出でぬ



血圧の高き姉に贈るアマチャヅル

   ドクダミ摘まんと梅雨明けを待つ



整枝済みし松に来て鳴く蝉を聞き

   落ちし松葉を拾ひ集むる