おしなべて素枯るる中に株増えて
万年青のみどり凍みに耐へをり
七十路越ゆれば一日一日が貴しと
従兄弟の言ふをしみじみと聞く
庭内の裸木の雪とけ初めて
午後の日ざしにしきりに雫す
かへりくる言葉は少し間のあれど
ペルーの汝の声受話器に近し
赤彦の「家ひくくして道広し」の額
かかげある店にて木曾土産買ひぬ
この冬のきびしき寒さに凍み枯れて
月桂樹の葉風に鳴りをり
ようやくに春めきし日を背に受けて
二週間おそく春野菜蒔く
五年振りの帰国間近き汝の布団
春めきし光の屋根に広げ干す
末の娘の嫁入りの荷物出し終へて
寂しけれど心安けし
長かりし厳しき冬を思ひつつ
池の水道の囲ひを外す