童話「雪んこの舞」


童話「雪んこの舞」1


暑い夏が終わり、さわやかな秋がやってきました。
遠い空の国では、たくさんの雪のこども・雪んこ
が生まれました。
生まれたばかりの雪んこは、まんまるで透明です。
大きさは、0.5ミリくらい、
人間と同じように、目も耳も鼻もついています。



その中に、目がみえない雪んこが、ひとりいました。
名前はるみ。るみは目がみえないけれど、とても明
るいこどもです。
おとうさんとおかあさんと、三人で暮らしています。



るみたち雪んこが、最初におぼえなくてはならない
こと、それは雪の舞でした。
るみも生まれてすぐ、おかあさんから雪の舞の手ほ
どきを受けました。
「ちら、ちら、ちら」
「ちーら、ちーら、ちーら」
これが雪の舞の基本です。
おかあさんはるみの前で、何度も何度もおどってみ
せました。



しかし、目のみえないるみには、どうやっておどった
らいいのか、見当もつきません。
「るみ、右の手を高くあげ、それから左の足をあげる
のよ」
おかあさんはるみの手をとって、何度も教えてくれる
のですが、
るみには少しもわかりません。



「るみ、もっと左足を高くあげて」
おかあさんの声で左足をあげると、るみはバランスを
くずし、すってんころりんところんでしまいます。
おかあさんにとって、目のみえないるみに雪の舞を教
えることは、想像していた以上に大変な仕事でした。


      つづく



童話「雪んこの舞」は、みほようこの初めての童話集・
「風の神様からのおくりもの」に収録されています。



風の神様からのおくりもの―諏訪の童話

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