童話「かきつばたになった少女」


   童話「かきつばたになった少女」5


かきつばたは、心の中でおとうさんにお願いしま
した。



どのくらいの時間が過ぎたのでしょうか。
かきつばたには、長い時間が過ぎたように感じま
した。霧がさっと晴れ、目の前には、真っ青な空
があらわれました。



そして、広い草原のむこうから、こちらにむかっ
て、少年が走ってくるのがみえました。少年の姿
は、草原を走っている小鹿のように見えました。
少年の姿をみた時、かきつばたはほっとしました。
「こんにちは。すごい霧だったね」
少年が、にこにこしながら近づいてきました。



「こんにちは。すごい霧でびっくりしたわ。もう
家に帰れないのではないかと思ったわ」
かきつばたは、ほっとした顔でいいました。
「みかけない顔だけれど、きみ、どこからきたの?」
「あの山の向こうからよ」
「きみの名前は、なんていうの?」
「かきつばたといいます」
「えっ、かきつばた?」
少年は、驚いたような顔をしました。



「美しい少女だと評判の、あのかきつばたさんなの?
おらは、かきつばたさんに会えるのを、ずっと楽しみ
にしていたんだよ」
少年は、うれしそうにいいました。


                        つづく



童話「かきつばたになった少女」は、今年
http://www.choeisha.com/から
発行される、みほようこの四冊目の童話集・「ラ
イオンめざめる」に収録されます。



童話集「ライオンめざめる」は、「風の神様から
のおくりもの」シリーズ4。
今、本を製作中。
九月までには、本ができる予定です。



    今までに発行されたみほようこの本



風の神様からのおくりもの―諏訪の童話




竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)




ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)