童話「かきつばたになった少女」


  童話「かきつばたになった少女」8


「ええ、よく知っていますよ。だって、山彦は私
が大好きだった人のこどもですもの」
「えっ?」
「少女の頃、私は霧が峰で人間の少年に会ったの。
そして、その少年と何度か会ううちに、おたがい
に好きになったわ。でも・・・今もそうだけれど、
人間の男性と女神は、結婚することは許されてい
なかったの。だから、私はその人と結婚すること
をあきらめたわ。でも・・・私はその人のことを
どうしても忘れることができなかった。だから、
誰とも結婚しなかったの。その人は、その後おさ
ななじみの人と結婚したわ。そして、生まれたの
が山彦。だから、山彦のことは、ずっと気になっ
ていたわ」



「そうだったのね。私何も知らなかった」
「この話は、今まで誰にもしたことがないの。
あなたのおとうさまにもね。この話は、二人だけ
のひみつよ」
「おばさま、私はだれにもいわないわ。もちろん
おとうさまにも・・・」
おばさまは、若い頃の思い出をかきつばたに話し、
すっきりしたようでした。そして、きすげの花を
みたおばさまは、少し元気になりました。


        つづく



童話「かきつばたになった少女」は、今年
http://www.choeisha.com/から
発行される、みほようこの四冊目の童話集・「ラ
イオンめざめる」に収録されます。



童話集「ライオンめざめる」は、「風の神様から
のおくりもの」シリーズ4。
今、本を製作中。
九月までには、本ができる予定です。




   今までに発行された「みほようこ」の本



     風の神様からのおくりもの―諏訪の童話




    竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)




    ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)