童話「笛の音よ、永久にひびけ」


   童話「笛の音よ、永久にひびけ」1


志賀高原の丘の上に、大きないたや楓の木が立って
います。
「あーあ、よく寝たのぅ。さて、ぼつぼつ目をさま
すとするか」
二百才になった楓は、大きなあくびをしました。
そして、芽をだす準備を始めました。



「ほーほけきょ、ホーホケキョ」
四月になると、森へうぐいすがやってきます。
「楓のおじさん、元気?」
「ああ、元気だよ。うぐいす君、君は良い声だね」
楓は、うぐいすがくるのを、楽しみにして待ってい
ます。



「かっこう、かっこう」
五月なかばになると、かっこうがやってきます。
かっこうの元気な声が、森にひびきわたります。
「かっこう君、君は元気だねぇ」
楓は、かっこうに話しかけます。
「もうすぐ夏がきますよぉ」
かっこうは、森の仲間たちに、夏の訪れを知らせ
ます。
「わしもかっこうのように、いつまでも元気でいた
いものじゃのぅ」
楓はかっこうの声を聞くたびに、そう思います。



楓の木には、こげらもやってきます。こげらは、木
の幹をコツコツとたたきながら、虫を食べてくれます。
「ギィーギィー」
初めてこげらの鳴き声を聞いた時、楓はびっくりしま
した。
「はて、何の音だろう?ボートをこいでいるような、
きみょうな音が聞こえるけれど、何の音かな」と。
こげらの鳴き声だと知り、楓は「面白い鳴き声だな」
と思いました。


      つづく



童話「笛の音よ、永久にひびけ」は、みほようこ
四冊目の童話集・「ライオンめざめる」に収録されます。


「ライオンめざめる」は、来月末(九月末)に、
http://www.choeisha.com/
から、発行されます。



    収録される童話


  ・ ライオンめざめる

  ・ 笛の音よ、永久にひびけ

  ・ かきつばたになった少女