愛犬りゅう「ばいばい、またね」


   愛犬りゅう「ばいばい、またね」2


十月三十一日。
ぼくはこの世に生まれた。ぼくと一緒に、弟と妹
も生まれた。
「あっ、可愛い犬。この犬を先生にあげよう」
少女はそういって、ぼくをだきあげた。



ぼく、うれしかったな。早く大きくなって、その
家へ行こうっと。
ぼくのかあちゃんも、この家の人たちも、みんな
ぼくをかわいがってくれた。
とくに少女は、うんとぼくをかわいがってくれた。



一方、ぼくが行く家でも、「あと何日かたつと、
我が家に犬がくるのね」と、首を長くして待って
いてくれたらしい。
おくさんは「犬の飼いかた」という本を買ってき
て、一生けんめい犬について勉強をしていたという。
「早くその家へ行きたいなぁ」
ぼくもその家へ行く日を、楽しみにして待っていた。



十二月九日。
その日はからりと晴れた良い天気だった。
今日はぼくをかってくれる社会科の先生の家に行く
日だ。ぼくは朝からそわそわしていた。
「その家へ行ったら、うんとかわいがってもらうの
だよ。おまえはきついから、気をつけないと・・・
ね。元気でくらすのだよ」
かあちゃんは別れぎわにぼくにいった。



かあちゃんも元気でね」
ぼくはかあちゃんに別れをつげた。かあちゃんはぼ
くと別れるのがつらそうだった。
ぼくをかわいがってくれた少女にも、「ありがとう」
と、何度もお礼をいった。
「先生とおくさんに、うんとかわいがってもらうの
だよ」
少女はぼくの頭をなでながら、そういった。


     つづく