愛犬りゅう「ばいばい、またね」


   愛犬りゅう「ばいばい、またね」6


「何の音だろう?」
しかし、何の音かぼくにはわからなかった。
あーちゃんが階段から足をふみはずした音だと、
後で知った。だから、ぼくのおしっこどころで
はなかったのだろう。



こらえきれずに、ぼくはその場でおしっこをし
てしまった。
五分位して、あーちゃんは足をひきずりながら、
ぼくの所へやってきた。
「りゅう、きてあげられなくて、ごめんね。階
段からおちてしまったの。痛かったわ。りゅう、
これからは自分でおしっこをしてね」
あーちゃんはすまなそうにぼくにいった。



「自分でしてね」といわれても、どこへおしっ
こをしたらよいのか、ぼくにはわからない。
うんこはできるだけ同じ場所でするようにしたが、
おしっこは気のむくままにしていた。
あーちゃんはぼくがあちこちでおしっこをしてい
ることを知っていたが、何もいわなかった。



しかし、雪が降った時には、どこへおしっこをし
たかはっきりわかってしまう。
「同じ所でおしっこをすれば良いのに。りゅうって、
本当にしりくせが悪いのね」
ある日、あーちゃんはぽつりとぼくにいった。
「自分でしてねって、あーちゃんはいったのに・・・」
ぼくは「くぅーん」とないて、あーちゃんに抗議し
た。



その後、あーちゃんはおしっこのことはあきらめたの
か、何もいわなくなった。
やれやれ良かったと思う反面、複雑な気持だった。


    つづく