愛犬りゅう「ばいばい、またね」

  
  愛犬りゅう「ばいばい、またね」8


ぼくはぎっちょだ。何をするにも、左手が先に
でてしまう。
あーちゃんはぼくが寒いだろうと思って、小屋
の入口にビニールをはりつけてくれた。
「変なものをはりつけてくれたけれど、どうや
って中へ入ったら良いのだろう?」



ぼくは、どうやったら小屋の中へ入ることがで
きるか、いろいろ試してみた。
頭でビニールをおしてみたが、うまく中へ入れ
ない。おしりでビニールをおしてみたがだめ。
左手で「えいっ」と、ビニールをおしたら、簡
単に小屋の中へ入ることができた。
「簡単じゃないか」
ぼくはうれしくなって、何度も小屋を出たり入
ったりした。



あーちゃんの弟子が飼っている犬は、飼い主が
ビニールをはりつけてくれたのに、小屋の中へ
入ることができず、一晩中寒くてふるえていた
という。
左手を上手に使って小屋の中へ入るぼくをみて、
あーちゃんはいった。
「あら、りゅうは上手に小屋の中へ入るのね。
りゅうって、ぎっちょだったのね。 知らなかっ
たわ・・・」と。



あーちゃんの家に行ってから、十日くらいたっ
たある朝。
「りゅう、今日は東京へお茶のけいこに行って
くるから、いい子で留守番をしていてね」
そういって、あーちゃんは朝早くでかけていった。
あーちゃんは、常はセーターとズボンで暮らして
いる。
でも、今日はみたことのない「着物」をきていた。
お茶のけいこ着らしい。
あーちゃんは「お留守番」といったけれど、お留
守番て何だろう?
でも、ぼくにはわからなかった。




しかし、いつもと様子がちがうことは、なんとな
くわかった。
午前中は、何事もなく終わった。
午後になったら、空から白いものが降ってきた。
「何だろう、この白いものは?」
ぼくは、初めてみる白いものに、興味を持った。
そして、白いものをおって、庭を走りまわった。



ところが・・・、はしゃぎすぎて、長い鎖がさつ
きの木にからまってしまった。
「だれか、助けて!!」
ぼくはひっしで助けをもとめた。
しかし、だれも助けにきてくれなかった。


       つづく