愛犬りゅう「ばいばい、またね」


  愛犬りゅう「ばいばい、またね」14


「ちょっと、一人で外へ行ってみようかな?」
「いや、ちゃんと待っていないと、あーちゃん
にしかられる」
「少しぐらいの冒険なら良いだろう」
ぼくの心はゆれた。



「こんな良いチャンスはない。そうだ、冒険に
行こう!!」
そう思ったぼくは、かけだした。
後をふりかえったら、あーちゃんが台所からで
てくる所だった。
「りゅう、またせたね」
遠くであーちゃんの声が聞こえた。
あーちゃんは、楓の木の下へ行ったら、ぼくが
いない。
びっくりしたあーちゃんは、「りゅう、りゅう」
と、大声でぼくをよんでいる。
ぼくはあーちゃんの声に驚き、ひっしで逃げた。
なぜ逃げるのだろうかと思いつつ・・・。



あーちゃんは、すごい勢いでぼくを追いかけて
くる。あーちゃんは、小学生の頃から陸上の選
手だ。だから、ものすごく足がはやい。
たちまち、ぼくはあーちゃんにつかまってしま
った。
「りゅう、なぜ逃げるの!!車にひかれたらど
うするの!!」
ぼくはあーちゃんにきつくしかられた。
でも・・・、初めての冒険は楽しかった。
あーちゃんには悪いけれど、また冒険にいきた
いな。



死ぬまでの15年3ヶ月の間に、ぼくは何度か脱
走した。自分から脱走したわけではない。
知らない間に、つないであった鎖が切れたのだ。
ぼくは、その偶然のチャンスを、うまく利用した
だけだ。
そのたびに、あーちゃんには心配をかけた。
あーちゃん、何度も心配かけてごめんね。


         つづく