愛犬りゅう「ばいばい、またね」


   愛犬りゅう「ばいばい、またね」16


急な坂になっているので、「ごぉー」という車
の音がすごい。
でも、何度も「ごぉー」という音を聞いている
うちに、少しなれてきた。
なれてきたが、それでもこわい。
あーちゃんは、どんどん歩いていく。
・・・といっても、ぼくが歩くのが遅いだけだ。



あーちゃんは、少し行っては立ち止まって、ぼ
くの様子をみている。
「あーちゃん、待って!!もっとゆっくり歩い
て・・・」
ぼくは心の中で何度もさけんだ。
でも、あーちゃんにはぼくのさけびは届かなかっ
たようだ。



ぼくはよろよろしながら歩いた。
「なんて急な坂道だろう」
ぼくは長い坂道をみて、ためいきがでた。
それでも、ぼくは一生けんめい歩いた。
「ぼく、もう歩けないよ・・・」
ぼくは疲れちゃって、道にしゃがみこんだ。
「りゅう、どうしたの?疲れてしまったのね。
じゃあ、だっこしてあげよう」
そういって、あーちゃんはぼくをだきあげた。
でも、ぼくは生まれた時から、人にだかれるのが
大きらい。
だから、あーちゃんの腕の中でもがいた。



「あっ」
あーちゃんがさけんだ時には、ぼくは地面に落ち
ていた。
「痛い!!」
ぼくはびっくりしてさけんだ。
「あっ、落ちちゃった」と。
「りゅう、大丈夫?なぜ急にあばれるの。怪我を
したらどうするの!!」
ぼくはあーちゃんにしかられた。



あーちゃんは足や手が折れていないか、ていねい
にしらべてくれた。
痛いけれど、どこも折れてはいないようだ。
あーちゃんはぼくの体を何度もやさしくなでてく
れた。痛みも少しやわらいだ。
だっこは大嫌いだが、今日はおとなしくあーちゃ
んにだっこしてもらおう。
こんなに長い時間だっこしてもらったことは、初
めてだ。
二日位は、体が痛かったけれど、すぐなおった。
やれやれ・・・。



それからずっと、十五年三ヶ月間、死ぬまぎわま
で、毎日散歩をした。
少しぐらい雨や雪が降っても、散歩をした。
散歩をしなかった日は、あーちゃんがお茶の稽古で
東京へ行った日だけだ。
あーちゃんと何回散歩をしたのだろうか?
5000回以上散歩をしたのではないかな。
あーちゃんと一緒の散歩は、楽しかったな。


                  つづく