白駒の池


      白駒の池14


「だいじょうぶ。きっと花が咲くよ」
清太はいいました。
 でも、ほんとうに花が咲くだろうかと、清太は
不安でした。
「どうか、花が咲きますように」と、清太は心の
中で神様にお願いしました。
「ゆうすげって、日光きすげのように、群落には
ならないのかしら」
「そういえば、あっちに一本、こっちに一本とい
う感じだね。じゃあ、ここでうす暗くなるのを待
とうか」



「ちょっと早いけれど、むすびを食べない?」
そういって、二人はむすびを食べました。
「二人だけで食事をするのは、初めてね」
きよは、はしゃいでいいました。
「きよちゃんがにぎってくれたこのむすび、とっ
てもおいしい。おれ、白米のおにぎりなんて、生
まれて初めて食べた。おいしいね」
「私、清太さんのために、心をこめて一生けんめ
いむすびをにぎったのよ」
「だから、おいしいんだね」
二人はたわいもない話をしながら、むすびを食べ
ました。幸せなひとときでした。



しばらくして、きよが、あらたまった口調でいい
ました。
「清太さん。私、縁談の話があるの。ほら、清太
さんも知っている小諸の次郎さん。その次郎さん
と、所帯をもったらどうかといわれているの。次
郎さんはね、とうちゃんの姉の二番目のこども。
次郎さんが、うちへ養子にきてもいいといってい
るらしいの」


        つづく