白駒の池16
きよちゃんが結婚してしまえば、もう「きよちゃん」
なんてきやすく声をかけることもできないし、こう
して二人で馬を走らせることもできないのだなと思
うと、清太はさみしく思いました。
「おらは、きよちゃんが大好きだ。次郎さんにも、だ
れにも、きよちゃんをわたしたくない!!きよちゃん
は、おらのものだ」
清太は、心の中でさけびました。
「おらが家柄の良い家に生まれていたら、きよちゃん
に今プロポーズするのに。でも、おらの家は貧乏で、
きよちゃんを幸せにしてやることができない。第一家
柄がちがいすぎるし・・・」
清太の心は、ゆれました。
二人は、無言のままで、ゆうすげのつぼみをみていま
した。清太には、長い時間がすぎたように感じました。
あたりがだんだんうす暗くなってきました。
どこからか、ジャスミンのようないい香りがしてきま
した。
みると、ゆうすげのつぼみが大きくふくらんでいます。
あざやかなレモン色のつぼみでした。
「きよちゃん、もうすぐゆうすげの花が咲くよ」
清太は、気持をきりかえようと、明るい声でいいました。
つづく