白駒の池


白駒の池21


「きよ。そうはいかない。とうちゃんのわがままだ
ということはわかっている。でも、長者の娘が、使
用人と結婚したなんて、とうちゃんは村の人たちか
らいわれたくないのだ」
「私は、みんなからなんといわれようと平気だわ。
だって、清太さんは、人間としてりっぱな人だもの。
清太さんは、家で働いている人や近所の人たちから
も好かれているわ」



「きよ。たのむ。とうちゃんの気持もわかってほし
い」
長者は、きよのいうとおりだと思いつつ、それでも、
「自分の娘には、家柄の良い青年と結婚してほしい」
と思うのでした。
それは、長者の親心でした。



「それはそうと、清太は、きよのことをどう思って
いるんだい」
「清太さんの気持ちをたしかめたことはないからわ
からないわ。でも・・・清太さんは、私のことが大
好きだと思う」
「そうか。清太をここへよんでおいで」
「はい。よんできます」
きよは、清太をよびに行きました。



「清太さん。とうちゃんがよんでいるわ」
「長者が?」
「何か清太さんに聞きたいことがあるって」
「おらに聞きたいことって、何だろう?」
清太は、不安な気持で、長者の部屋へいそぎました。
「長者さま。何かご用でしょうか」
「清太。そこへおすわり」
「はい」
 清太は、何をいわれるのだろうかと、緊張しました。


                       つづく