ふしぎな鈴「校長先生と桜の鈴」4
「リーン、リーン、コロンころん」
何度も鈴の音を聞いているうちに、校長先生の頭の
中に、遠い昔のある光景がぼんやり浮かんできまし
た。
大きなおやしき…たくさんの木が植えてある広い庭
…庭にやってくるたくさんの小鳥…そして庭で遊ん
でいるかわいい女の子。
遠い昔のことが、少しずつ少しずつ校長先生の頭の
中によみがえってきたのです。
みごとに咲いた桜の花の下で、「この鈴を大切にす
るのだよ」といって、娘に鈴をわたしている光景が
浮かんできたのです。
それだけではありません。娘とすごした鎌倉の様子
が、走馬灯のように校長先生の頭の中にうかんでき
たのです。
「おとうさま、おとうさまー」とよぶ娘の声まで、
校長先生ははっきり思い出しました。
「やはり、かなは私の娘だったのだ」
校長先生はそう確信しました。
つづく
「ふしぎな鈴」は、みほようこの三冊目の童話。
一昨年九月、「鳥影社」から発行されました。
挿絵は、長野ひろかず先生。