風の神様からのおくりもの


     風の神様からのおくりもの1


五月十日。
からりと晴れたさわやかな日でした。
「ぴゅー、ぴゅーー」
気持の良い風が、諏訪盆地を通りすぎて
いきます。



風の神様はいつものように諏訪湖のまわ
りをひとまわりして、たった今社に帰っ
てきたところです。
「今日も一日無事に終わりそうじゃな。
さてわしもひとやすみするか」
神様は境内の切り株に腰をおろしました。



「たっ、たった。たっ、たった」
誰かが足早に歩く音が聞こえてきました。
「誰じゃろう。ひどくあわてているよう
じゃが。何事もなければいいがのー」
神様はぐるりとあたりをみまわしました。
しかし誰もいません。



「風の神様、風の神様。小桜でございます。
たった今、伊那谷に女の子が生まれたので
すが、おぎゃーと泣きません。その子は私
の国から、ある大切な使命を持って、そち
らの国へ行った者です。
風の神様、お願いです。どうかその子を…、
どうかその子を助けてくださいませ」
その声は小桜姫でした。


  つづく


「風の神様からのおくりもの」は、みほよう
この初めての童話集・「風の神様からのおく
りもの」に収録されています。



http://www.bk1.co.jp/product/2056682




心を病む兄のために、明神様にお参りする心
優しい少女の話など4編。
信州諏訪を舞台に、美しい挿絵を添えて描か
れる心温まる創作童話。