明神さまの姿をみた少女


    明神さまの姿をみた少女7


少年は黒い冠をかぶり、真っ白い着物の上にこい
緑色の上着をきていました。
「少女よ、よくきたのー。わしはおまえに会える
日をずーと待っていたぞ。わしは諏訪の神・明神
じゃよ。さっき松虫草のまわりをまっていた赤い
ちょうは、くじゃくちょうというのじゃ。



この高原にきても、くじゃくちょうはめったにみ
れんぞ。心の優しい少女がこの高原にきた時、赤
いちょうはどこからかでてくるのじゃ。今までく
じゃくちょうの舞をみたものは一人もいないぞ。
おまえだけじゃ。わしもあそこでみていたが、うっ
とりするような、美しい舞じゃったのー」



その声は少年の声ではなく、いつか聞いたことのあ
る明神さまの声でした。
少女は明神さまに病気の兄のことを、何度も何度も
お願いしました。


つづく



「明神さまの姿をみた少女」は、みほようこの初めて
の童話集・「風の神様からのおくりもの」に収録さ
れています。



風の神様からのおくりもの―諏訪の童話

風の神様からのおくりもの―諏訪の童話