きよと清太と、そして白駒


    きよと清太と、そして白駒2
    

「おらの家の近くでも、座禅草の花が咲く。もう、
花が咲いているかな」
清太は、故郷の諏訪を思いうかべながらいいました。



「その場所はね、諏訪の神様が住んでいる守屋山の
ふもとなんだ。春になるとね、林の湿地に、座禅草
がかわいい芽をだすんだよ」
いつも無口な清太が、今日は一人でしゃべっています。



「今日の清太さんは、別人みたい」
きよは、心の中でそっとつぶやきました。
「おじょうさまは、諏訪へ行ったことがある?」
「あるわ。とうちゃんと一緒に、御柱祭をみに行った
ことがある。清太さん、御柱祭って、勇ましいお祭ね」



「ほんと、勇ましいお祭だね。御柱祭は、七年に一度、
申年と寅年に行われる諏訪大社のお祭だよ。中でも、
上社の川越えと下社の木落としは、すごいね」
清太は、何年か前にみた御柱祭を思い出しながらいい
ました。


つづく



「きよと清太と、そして白駒」は、信州の佐久地方に伝
わっている「白駒の池」の話をヒントに、みほようこ
書いた物語。

  
       主な登場人物


    きよ   長者の一人娘

    清太   長者の家で働いている少年

    白駒   長者の家の馬